2017年4月7日金曜日

戦争が始まったらこうなる 北朝鮮vs.米・日・韓の戦い 緊急内幕レポート 危険な隣人たちと、ウブな日本人 (週刊現代) 



http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35577
2013年04月23日(火)週刊現代 :現代ビジネス

■米軍はどう動くのか

 北朝鮮情勢が、いよいよ緊迫してきた。

 韓国の国防部関係者が解説する。

「北韓(北朝鮮)は、中距離弾道ミサイル『ムスダン』の発射を東海岸(日本海)の元山から行うなど、東海岸に周辺国の目を向けさせています。だが攻撃の"本丸"は、あくまでも西海岸(黄海)だと国防部では見ています。

 北韓は、これだけ内外に挑発的な発言を繰り返しているので、何もしなければ、金正恩第一書記の名折れとなります。しかし本当にアメリカと戦争になれば、一溜まりもないことは重々心得ている。

 そこで、米軍を参戦させない範囲内で最大限の挑発をする可能性が高い。それには、首都ソウルに近い西海岸で暴発するのが、一番効果的だというわけです。

 具体的には、西海岸に浮かぶNLL(北方限界線)の南側にある5つの島を砲撃するのではと警戒しています。NLLは米韓が海上に引いた線で、北韓は認めていないので、彼らにとって攻撃の正当性がある。そして小島くらいの砲撃では、アメリカは参戦しないという読みもあるでしょう。実際、'10年11月に、北朝鮮が突如、5島の一角である延坪島を砲撃した時も、韓国側が泣き寝入りしました」

 前項でやはり「NLL付近が危険」と述べたソウル大学統一平和研究院の張容碩博士も続ける。

「北韓は4月9日に、南北和解の象徴と言われた開城工業団地を封鎖しました。ここは南北軍事境界線まで8kmの距離にあり、元々は朝鮮人民軍の基地があった場所です。そこへ再度、大量の朝鮮人民軍を配置し、韓国攻撃の拠点にしようということでしょう。北朝鮮との国境付近は、大変危険です」

 実際、38度線に近い韓国京畿道高陽市では、4月1日より「危機対応マニュアル」を市民に配り始めた。「核兵器・放射能攻撃時の行動要領」「化学兵器攻撃時の行動要領」「生物兵器攻撃時の行動要領」など、全10ページにわたる行動指針を記した、おどろおどろしいパンフレットだ。

 高陽市安全都市課の職員が語る。

「わが市は目と鼻の先が北朝鮮なので、すでに臨戦状態です。市民からの問い合わせが殺到したため急遽、10万枚のパンフレットを作成して市民に配付したのです。それでも市民からの問い合わせが日々、大量に来て、生きた心地もしない日々です」

 北朝鮮は4月9日、韓国国内の外国人に対しても、「韓国から至急離れないと責任は取らない」という警告を発表した。これによって韓国では、ラーメンや乾パンなどの非常食や、ミネラルウォーターの買い占めが起こっている。韓国はまさに、「第2次朝鮮戦争開戦前夜」といった緊迫した状況なのである。
 そんな中、ケリー米国務長官が、4月12日から15日まで、韓国、中国、日本と北朝鮮を取り巻く3ヵ国を回る、東アジア初外遊に出た。

 アメリカ国務省関係者が語る。

「わが国はいままさに、韓国と合同軍事演習の最中で、いつでも実戦に移す準備はできています。今回のケリー国務長官の3ヵ国訪問で最重要だったのは、中国訪問でした。新指導者の習近平は、金正恩を救おうとしているのか、それとも滅ぼそうとしているのかを、しっかり見極めようとしたのです」

 これまでの東アジア地図は、日米韓vs.中朝という対立の構図だった。前世紀末に世界の冷戦構造が崩壊したが、東アジア地域だけはいまだに、冷戦構造を引きずっているからだ。

■8割の確率で戦争が起きる

 だがこの伝統の図式に最近、異変が起こっている。それは、中国の態度の変化である。

 習近平政権は、いまの大荒れの北朝鮮をどう見ているのか。中国の外交関係者が明かす。

「かつて毛沢東と鄧小平は金日成を、朝鮮戦争を共に戦った"血を分けた誼"と見なしていた。続く江沢民と胡錦濤は金正日を、兄弟国の"特別な弟分"と見なしていた。金正日は計7回訪中したが、北京へ来れば必ず中国共産党のトップ9が全員揃って歓待する習慣があった。

 だが習近平は金正恩を、単なる"物騒な若造"としか見ていない。だから、北朝鮮のミサイル実験や核実験を受けて、いともあっさりと、北朝鮮への重油・食糧・肥料の援助ストップを決断したのだ。

 わが国にとって絶対に看過できないのは、朝鮮戦争時代の悪夢である米軍が北朝鮮に侵入してくることだけだ。それさえなければ、いつ核兵器の矛先をわが国に向けてくるか知れない金正恩という狂った指導者など、いつ失脚しても構わない。それが習近平新主席のホンネだ」

 この中国の外交関係者によれば、中国外交部では、北朝鮮人のことを「棒子」と呼ぶ。トウモロコシばかり食べている棒のような奴という意味だ。また、金正恩第一書記のことは「三胖児」(デブの三男坊)という隠語で呼んでいるという。それくらい、いまの北朝鮮と金正恩を蔑視しているというわけだ。

 4月10日には、中国共産党機関紙『人民日報』が発行する中国最大の国際情報紙『環球時報』に、中国で最も有名な北朝鮮研究者の張瑰・中国共産党中央党校教授が、次のような原稿を寄せた。
〈朝鮮半島に近く戦争が起こる確率は、7割から8割くらいあるだろう。北朝鮮にとって武力統一は、昔からの既定路線だからだ。金正恩は、金日成と金正日が成し遂げられなかった祖国統一を、いまこそ果たそうとしているのだ。

 北朝鮮の国民は幼少時から、「朝鮮はアメリカと日本に勝利した軍事大国である」と教えられて育っている。金日成軍事総合大学の軍事関係者は、「アメリカを倒すのは、掌を返すくらい容易だ」と豪語しているほどだ。

 先日、朝鮮中央テレビは、3日間で韓国を占領するというシナリオの映像を流した。1日目に韓国の重要拠点を占領し、15万人の米兵を捕虜にする。2日目に韓国の大多数の都市を占領し、3日目にその他の地域を占領するというものだ。朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は、「朝鮮は世界中でアメリカに対抗できる唯一の国である」と誇っているほどだ〉

 まさに皮肉たっぷりの筆致で北朝鮮の「井の中の蛙」ぶりを強調しているのだ。

 だが、張教授が述べている「7割から8割の確率で第2次朝鮮戦争が勃発する」という予想は、すなわち中国政府の見解に他ならない。前出の韓国国防部関係者が続ける。

「北朝鮮は、南北の局地戦ならば、米軍は参戦しないと踏んでいるようだ。だが、実際にはアメリカは、三つの条件さえ整えば、第2次朝鮮戦争に参戦する可能性が高い。それは、第一に北朝鮮の核やミサイルによって自国の脅威が増すこと。第二に戦争によって自国の兵士の損失が最小限に抑えられる見通しがつくこと。そして第三に中国の後押し、もしくは少なくとも黙認が得られることだ」

 前述のような習近平政権の"反金正恩政策"を見ると、金正恩除去に向けて米中が手を組むというシナリオは、十分考えられるのである。

■死傷者は400万人

 それでは実際に、南北衝突となった場合、どのようなシナリオが想定されるのか。軍事評論家の世良光弘氏が解説する。

「第2次朝鮮戦争になった場合、北朝鮮は38度線沿いにある数千基の砲台から、ソウルへ向けて一斉砲撃します。合わせて、スカッドミサイルもソウルへ向けて撃ち込みます。

 しかし米韓は、その前にB2ステルス爆撃機を発進させ、精密誘導爆弾で38度線の砲門や主要ミサイル基地を爆撃します。B2爆撃機の護衛には、F22ステルス戦闘機が当たります。

 これに対し北朝鮮は、ミグ29戦闘機が迎撃しますが、まともに稼働するのは30機程度で、たちまち撃墜されるでしょう。その間にも米韓は、F15EストライクイーグルやB52爆撃機、ホーネット戦闘機などを投入します。また海からはトマホーク巡航ミサイルで平壌を爆撃します。そうして制空権を完全に押さえた後、戦車部隊やストライカー戦闘旅団などの地上部隊が38度線を越えて進軍します。
 こうして北朝鮮全域を制圧するには、3ヵ月くらいかかるでしょう。それでも山岳地帯の坑道に隠れるであろう金正恩の身柄を拘束するには、それ以上の時間がかかります」

 かくしてイラクのサダム・フセインのように、金正恩も拘束されて、戦争は完全終結となる。その後、北朝鮮には、米中韓、それに日本とロシアも加わった5ヵ国との協調政権が樹立されるというシナリオだ。

 だがこのシナリオが現実のものとなれば、第1次朝鮮戦争と同様、400万人規模の死者を出すだろう。ちなみに中国は、金正恩から亡命要請が来ても、断るという。
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「週刊現代」2013年4月27日号より

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